かんもくネット Knet News 2011年10月 (2022年1月加筆転記)

  

2011年10月19日

SMQ-R (場面緘黙質問票:Selective Mutism Questionnaire - Revised)について

※ 質問項目は、Christopher A.Kearney,大石幸二氏監訳『先生とできる場面緘黙の子どもの支援』学苑社(2015)にも掲載されています。(2015.4加筆)

 SMQ-R は、保護者が16項目の質問に答えることで、子どもの場面緘黙の症状の程度を調べることができる「場面緘黙質問票」です。カルフォルニア大学のリンゼイ・バーグマン博士らが作成したSMQ(Selective Mutism questionnaire)17項目をかんもくネットが翻訳し、日本語版として16項目にしました。
翻訳は原著者のバーグマン博士の指示に従い、バックトランスレーション手続き(※注)を踏みました。

※ 順翻訳は、英語が堪能な日本人3名(臨床心理士・場面緘黙に詳しい英国在住の者・翻訳内容に精通しないプロ翻訳者)が独立して翻訳したものを調和させ、最終的な翻訳版を臨床心理士が作成しました。これをバーグマン博士に送り、日本語が堪能なネイティブ英語翻訳者によって逆翻訳された後、バーグマン博士によって項目表現の等価性が確認されました。その後、日本において場面緘黙児をもつ保護者5名で使用し、日本の状況に合わない「ベビーシッターのうち少なくとも1人と話す」項目を、原著者と相談の上で削除することとしました。(※ 加筆2022年4月1日)

 

原版SMQは3才~11才の子どもに実施され、尺度の信頼性と妥当性が確認されています(Bergman et al,2008)。

 場面緘黙は、過去にはまれな症状とされてきましたが、近年の研究では0.7%とする研究(Bergman et al,2002;Elizur et al2003)もあります。これまで症状を測る標準的な尺度がなく、そのために発症率、状態像、治療の有効性等の研究にあたって、共通認識をつくることが困難でした。共通の尺度がなかったために、研究によって状態が異なる子どもを研究対象にしてる可能性があったり、効果があるとされた治療や取り組みであっても、場面緘黙の症状がどの程度軽減されたのか明確でないのです。



SMQ-Rの使い方

SMQ-Rは「幼稚園や学校」「家庭や家族」「社会的状況(学校の外)」の3つから構成されています。
 子どもに場面緘黙の症状がある場合、保護者や教師は、「子どもが学校で話せないこと」だけに注目しがちです。しかし、「家庭や家族」「社会的状況(学校の外)」でどれだけ話せているかに目を向けることが大切です。下記のグラフは、場面緘黙の子どもの群と、場面緘黙でない不安症の子どもの群を比較したBergman et al(2008)の結果を、SMQの1項目の得点の平均値を割り出してグラフにしたものです。

[Bergmanら(2008)のSMQ(17項目)の数値から換算したSMQ-R(16項目)合計の平均値概算は、場面緘黙児は12点(学校1.8・家8.5・社1.7)。場面緘黙でない不安障害に当たる子どもの平均は、43点(学15.9・家14.5・社12.5)でした。]

    

 

 

 

 

 

 

場面緘黙の取り組みは、まず「家庭や家族」との発話を豊かにし、「社会的状況(学校の外)」でのコミュニケーションを広げ、それを「幼稚園や学校」の発話へと移していくことが基本です。時期をあけてSMQ-Rをつけることによって、治療や取り組みの進展状況を、保護者や援助者が確認することができるでしょう。

 ただし、SMQ-Rは発話のみに注目した尺度であることに注意しましょう。場面緘黙の治療や取り組みは、発話のみに注目せず、子どもの不安の状態の注目することが必要だからです。子どもがその状況に楽しんで参加できているか、自由に動けているか、うなづきやジェスチャーなど非言語コミュニケーションができているか、筆談ができるか、(相手と直接話せていなくても)その人に声を聞かれても平気かどうか等、発話に至る前の段階に着眼することも重要です。 


Bergman RL, Piacentini J, McCracken J.(2002)Prevalence and description of selective mutism in a school-based sample. J Am Acad Child Adolesc Psychiaty. 41,938–946.
Bergman RL, Keller ML, Piacentini J, Bergman AJ.(2008) The development and psychometric properties of the Selective Mutism Questionnaire. J Clin Child Adolesc Psychol. 37,456-464.
Elizur Y, Perednik R.(2003)Prevalence and description of selective mutism in immigrant and native families: a controlled study.J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 42,1451-1459.

SMQ画像.png